ノンフィクション 紹介

「下級国民A」書評  東北被災地復興の現実とは? 

東日本大震災被災地での体験と著書の意見をつづった「下級国民A」を紹介します。

復興地でいったい何があったのか、興味深いノンフィクションです。

下級国民A データ

著書:下級国民A

著書:赤松利市

出版社:CCCメディアハウス

価格:1650円

62歳の土木作業員出身の新人作家として話題になった、赤松利市さんの自伝的エッセイです。

下級国民A あらすじ

赤松さんはもともと世界的植物病理学者の家に産まれ、大学卒業後は大手消費者金融会社に入社しまし。

その後退職し、自身でゴルフ場のメンテナンス会社を起業・経営し、年収は2000万円ほどだったとのことです。

しかし境界性人格障害の娘さんの相手をするために仕事を減らしているうちにそちらも上手く行かなくなりました。

そのため、知り合いの土木工事会社の社長の長男の付き添い兼営業部長として新しい仕事を探して東北の被災地へ行きます。

そこで営業部長の仕事をしますが、土木の現場は頭数が多いほど支払われる額が大きくなるため、土木作業員としても登録されます。

そのため土木工事の現場にも顔を出しますが、そこでは元請けの大手から様々な差別待遇を受けて、さらに自社の現場では未経験なために足手まといになるため、様々な嘲笑、いじめの対象になります。

さらに除染の現場の方に行くと、地元の方たちからも、穢れた存在として差別の対象となります。

そういうことがありながらも、営業部長として新規に請け負う案件を探したり、自ら考え提案したりします。

「下級国民A」から学べたこと

著者は土木工事の大手の元請けからは露骨な差別的待遇を受けて、朝礼などでも人間以下かのような扱いを受けます。

さらに会社に属さないフリーの土木作業員の人たちを雇うため、非常識な人も多いので、対応に苦労するところがこちらの知らないことばかりで驚くことばかりでした。

さらに除染作業員となると、除染という仕事内容から、作業員の方たちは穢れた存在かのように地元の人から扱われるとのことでした。

日本人の独特な清潔好きがいろいろな差別を生んでいることがよく解りました。

「下級国民A」を読んで今後に役立てたいこと

東北の復興ということで多額の予算が組まれていますが、多くは受注する元請け会社のものとなります。

実際に工事をする人たちにはそれほど多く渡らないことや、工事をする人たちが安定した暮らしをするのはいろいろと難しいということに疑問を感じました。
最近は様々な建設現場でも社会保障への加入が求められるとのことですが、働く人が安定して暮らせる社会制度の必要性を感じました。
また、日本人の清潔好きが、特定の職業の人への差別につながっていることもよく解りました。

「下級国民A」の感想

多くの予算が投入された被災地ですが、そこで働く人の多くは不安定な立場で、安定して長期的に考えて働くことができるようにはなっていないことが意外でした。
被災すれば支援の対象になるが、そうでなければ様々な制度を受けられないというのはどうなのでしょうか。

「下級国民A」のイマイチだった点

あくまで、被災地での著者が過ごした数年の話なので、それ以外にも、その後の様々な作業員の人たちの生活や、それに対する支援がどのようにあるのかも知りたかったです。

西成にも多くの元土木作業員の高齢者の方々がいますが、正規、非正規関係なくそれなりに暮らせる制度が必要だと思いました。

「下級国民A」 おわりに

どこの世界にもある元請け、下請け、孫請、最底辺にいる派遣社員とのヒエラルキーがあるのを知りました。

また、被災地の実情がわかりました。

日本の暗部を除いて見たい方、下請け構造の問題点を感じている人にはぜひ読んで欲しいです。